2016年10月29日

第68話


「それは、私から話させてもらおう」

 その声に、カズヒデたちは振り返った。なぜなら、そこに居るべき人間でないと思ったからだ。

「アヤゴゼン……?」
「カズヒデ。あなたを騙すつもりではなかったのです」

 アヤゴゼンはそう言って、これまでの経緯について話し始めた。

「今回のゲンムとダイチのイクサは今までとは違うイクサだということに、気付いていましたか?」
「……なんとなく、ではあるけど。表面には見えてこない、『気持ちの弱さ』が見えていたきがするよ」
「その通りです。……今回のイクサ、これを引き起こしたのは、ノブナガなのです」
「ノブナガ、が……?!」

 その言葉は、カズヒデたちにとって予想外の言葉であった。
 アヤゴゼンは続ける。

「……ノブナガが何を企んでいるのかは、わたしにはわかりかねます。ですが、何か恐ろしいことを企んでいることは……理解できます。ですから、ケンシンもこれを嫌がっていました。シンゲンは、別ですが」
「シンゲンは……あちらの仲間、だと?」
「そういうことになりますね」

 アヤゴゼンが言ったことは、つまりこういうことだ。
 ノブナガがケンシン、シンゲン両方へ対話を持ちかけた。さらに、これはノブナガ自らが齎したイクサを収めるためのものであった。うち、ケンシンはそれを断り、シンゲンのみが対応する形となった。

「……そんなことが」

 カズヒデはアヤゴゼンから話を聞いて、愕然とした。まさか、ノブナガがそんなことをするとは思いもしなかったからだ。

「信じたくないというのもわかる。たしかにノブナガは絶対的な強者だ。現にこのランセの半分を彼の領地としているくらいだからね。けれども、彼だって『ブショー』だ。狡猾なこともするだろうし、卑怯な手だって取るだろう。それはブショーである所以だ。ブショーであるからこそ、それを使うことができる……ってのもあるけれどね」
「カズヒデは小さい時にノブナガに会ったことがあるんです」

 会話に割り入ったのはシノだった。

「へえ……。ノブナガに会ったことがあるのか」

 アヤゴゼンが言うと、カズヒデは小さく頷いた。

「なるほどねえ。たしかに小さい子供がノブナガの姿を見ればブショーになりたいと思うのも道理かねえ」
「道理とかどうとか解らないけれど、俺はそれを見て、ブショーはかっこいい存在だと思ったよ」
「ブショーがかっこいい……そりゃ、表しか見ていないからだよ。裏も見ていれば、それは自ずと『嘘』だってわかる。カズヒデ、あなたもブショーの端くれなら、解るだろう?」
「……あぁ」

 それは今まで彼が認めたくなかったことでもある。けれども、それは真実として、今は認めるほかないと彼は割り切っていた。

「ケンシンはどうするつもりなんだ。これについては」
「わかりません。ですが、あまり良くは思わないでしょうね」
「だと思った」

 カズヒデは小さく笑った。

「……だから、これは俺からの提案」
「なんでしょう」
「……俺がこの事態を何とかする。そのかわり、それが無事に達成できたら、ケンシンを俺たちの仲間にしたい」
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posted by 巫夏希 at 14:34| Comment(0) | ポケナガ
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