2017年06月11日

第69話

「……は?」

 カズヒデの言葉は、ほかのみんなが理解するまでに少々時間を要するほどに、突拍子もないことだった。

「カズヒデ……。あなた、今何を言ったのか理解しているのかしら?」

 アヤゴゼンは首を傾げつつ、カズヒデの言葉、その真意を尋ねた。
 もしかしたら自分が聞いた発言は間違いだったのでは無いか、そんなことを考えたからだ。
 しかし、カズヒデはそんなアヤゴゼンの不安を吹き飛ばすような、そんな無垢な笑顔で、

「ああ。理解しているよ。ノブナガと戦うためには、戦力が必要だろ。だから、そのためにはこのイクサを終わらせる。そして、ケンシンを自分の仲間とする。そのためには、どうすればいい?」
「……方法までは分かっていない。そうおっしゃるつもりですか?」

 アヤゴゼンは深い溜息を吐いて、カズヒデを問い詰める。
 対して、カズヒデはアヤゴゼンの雰囲気が変わったことに気付いているのかいないのか、そのままのトーンで話を続ける。

「うん。そこについては不味いところだとは思っている。けれど、それ以上に今はこのイクサをどうにかして……出来ることなら、ぶつかる前に止めてしまいたい。だから、今ここで作戦会議をしているってわけ」
「相変わらずカズヒデは呑気だなあ。ま、俺が言える立場じゃないのかもしれないけれど」

 ハンベエはそう言って床に寝そべる。

「ハンベエ……。あなたも、彼の指示に従うと?」
「従うというか、彼は本気でランセ一のブショーになろうと思っているみたいだからねえ? 別に俺がどうこう言う問題でも無いだろ。ま、面白いからついていく。ただそれだけの話だよ」

 面白いから。
 それはアヤゴゼンには理解しがたい感情だった。
 いや、正確に言えばこの場において『面白い』という感情を口に出せることが理解できなかった。いくらハンベエが軍師として有名であったとしても、彼の発言はどこか風来坊のような感じがあって、まあ、彼の発言だから致し方ないと思うブショーもほとんどだった。アヤゴゼンは彼と直接離したことが無いから、ずっと伝聞で聞いていただけに過ぎなかったのだが。
 今回、彼とはじめて話をしてその意味を漸く理解できた。
 ハンベエは利益を求めない。利益よりも、自身の興味を優位としている。
 だからこそ、若いブショーとともに旅をしているのだろう。
 アヤゴゼンはそう考えるに至った。

「……分かりました」

 だとすれば、彼女の考えはたった一つ。

「あなたに、賭けてみます」

 天才軍師をも虜にする若いブショーに賭けてみることだった。
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posted by 巫夏希 at 03:01| Comment(0) | ポケナガ
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