2017年07月22日

Splatoon:Reboot(1)




 ハイカラシティ。
 イカの若者たちの流行の中心。
 ブキ屋にフク屋、クツ屋などいろんなお店があって、ファッションの中心にもなっている。
 シオカラ節――イカのトップアイドル二人組の代表曲――をアレンジした発車メロディを聞いて、俺は駅に降り立った。
「ここがハイカラシティか……」
 見上げると、目の前にある巨大タワー、イカスツリーが見える。
 イカスツリーはハイカラシティのシンボルとして有名で、地方に住んでいた俺だってそれは知っていた。
ハイカラシティにやってきた目的は、別に観光というわけじゃない。イカとして強くなるため、だ。
 かつて、イカはタコと戦っていた。正確に言えば、インクリングとオクタリアン、だが。
 その……かつてナワバリバトルでオクタリアンはインクリングに負けた。そして場所を失ったオクタリアンはどこかへと消えてしまった。今でも、ハイカラシティには見えないが、それ以外の場所ではオクタリアンとインクリングの鍔迫り合いになっているところが多い。
 俺の住んでいた場所も、かつてはそうだった。
「どうしたんでし?」
 ふと下を見ると、そこにいたのは探検家のような帽子を被った眼鏡をかけた……ええと、少なくともインクリングではない、別の何か。
 俺がずっと見ていたのを気になったのか、
「ああ、僕はブキチでし! こう見えてもカブトガニでし!」
「ああ……カブトガニか。ごめん、インクリングかと思ったけれど、なんか違うように見えてさ」
「よく言われたでし! ……ハイカラシティははじめてでし?」
 こくり、と俺は頷いた。
 ブキチもそれを聞いて頷いて、
「そうでし、か……。だったら、ウチに来るでし! うちはブキを取り揃えているでし。君もきっと『マッチ』をするでし? あとは『フェス』もあるでし、ハイカラシティは楽しいこと尽くしでし!」
「……ブキ屋? ほんとうに?」
「信頼していないようでしね。でも、ほんとうでし! 間違いないでし! さあ、とりあえず君に合ったブキはブキ屋に行って決めるでし。餅は餅屋って言葉もあるでし、し!」
 それもそうだ、と言って俺はひとまずブキチの言うことを従うことにした。
 俺がハイカラシティですること。それは簡単に出来ることじゃないし、ブキも必要だ。ブキをそろえておくことは大事なことだろう。
 そう思って俺は、ブキチについていくことにした。

 ◇◇◇

 ブキチの店『カンブリアームズ』はハイカラシティのショッピングの中心であるブイヤベースにあった。中はそれほど広いものではないが、店の裏に試し打ちが出来る場所も用意してあるのだという。随分と準備ができている店だった。
「ほんとうはお金を取るのでしが……、今回は特別でし。これを君にあげるでし!」
 そう言ってブキチは店の奥から持ってきたものを俺に手渡した。
 それはアサルトライフルのようなものだった。
 俺だって、それが何であるかは知っている。――それはシューターだった。
「これは『わかばシューター』でし! 初心者にはうってつけのブキでし! 玉切れしにくく、一度にたくさんのインクを散布できるでし! サブウエポンとスペシャルウエポンについても話すけれど、いいでし?」
「ああ、お願いするよ。生憎、ブキについてはちんぷんかんぷんだから」
 ……ちょっとだけ嘘を吐いてしまったが、罪悪感は不思議となかった。
 これも目的のためだ。仕方ない。
「サブウエポンはスプラッシュボムでし! わかばシューターは短い射程距離と低い火力なので、それを補うことが出来るでし! ボムはとくにメインでは届かない距離に投げることが出来るから、より巧妙な戦術を行うことが出来るのでし。スペシャルウエポンは塗った面積が増えていき、一定面積を塗ることが出来ればゲージが溜まるでし、それによって使うことが出来るのでし。そしてわかばシューターのスペシャルウエポンはバリアでし!」
「バリア……ってことは攻撃を防ぐことが出来るのか?」
 俺はわかばシューターの銃身を手で叩きながら、そう言った。
「そうでし! だから攻撃の幅が広がるのでし」
「成る程……。ありがとう、これで何とか戦えそうだよ。どうやって戦っていけばいいのか解らなかったからさ」
 そうしてブキチにお礼を言った俺は、カンブリアームズを後にした。
 ハイカラシティの巨大なテレビ画面では、ニュース番組『ハイカラニュース』が流れていた。ホストはシオカラ地方出身の二人組、今やインクリングのトップアイドルであるシオカラーズが務めている。
『おおっと、臨時ニュースが入ってきたよ!』
 向かって左側――アオリがそう言った。
『何ね、何ね?』
 向かって右側に立つホタルが答える。
 次いで、彼女たちの背後にある画面が何かに変わる。――それは、イカスツリーだった。
 イカスツリーが映し出されていた。イカスツリーの全景は特に変化のないように見えるのだが……。
『なんと、大変! イカスツリーのオオデンチナマズが消えちゃった!』
『どっひゃー、それは大変だね』
 オオデンチナマズ? 俺はそれを見て、イカスツリーを見る。
 イカスツリーにオオデンチナマズが住んでいたらしいが、どうやら消えてしまったのだろうか。
『今、いろんな人が探しているみたいだけど、どうなのかな?』
『まー、すぐ見つかるっしょ』
『でも、オオデンチナマズはハイカラシティの電力を賄っているわけだし、すぐ見つかってくれないとライブとか放送に影響を及ぼすかもよ?』
『うーん……それは不味いかもねー』
 オオデンチナマズはハイカラシティの電力を賄っている、か。
 確かにそれなら少々マズイかもしれない。
『ま、今日はこのあたりで!』
『『イカ、よろしくー』』
 二人でそう合わせて、ハイカラニュースが終了した。
「オオデンチナマズ、か……」
 少し覚えておこう。そう思って俺は、その単語を反芻した。
「少年、オオデンチナマズがどうかしたかな?」
 それを聞いて俺は踵を返す。
 そこに立っていたのは、腰をすっかり丸くしている老インクリングだった。
「……いや、少し気になっただけで」
「ほうほう、そうか。確かに気になるのう。ハイカラシティの電力はインクリングの世界でも結構な消費量と言われている。その生産をすべて賄っているのが、オオデンチナマズだ。それが無くなってしまうことでどうなるのか、インクリングたちはあまり理解していない。だから、それをどうにかせねばならない。君はオオデンチナマズが盗まれた原因にオクタリアンが関わっていることを知っているかね?」
「オクタリアン……だって?」
 その単語を聞いて、顔が引きつった。
「そうだ。オクタリアン。ハイカラシティの住民はあまり気にしていないようだがな……、かつてイカスタワーの電波を私的利用したこともあった。だが、それも住民は気にしなかった。だから調子に乗ったのだろうよ。オオデンチナマズを盗んでも、今や住民に力はない。インクリングには力が無い、とな」
「……オクタリアンが地上への侵攻を開始している、と?」
 それを聞いて老インクリングは目を顰めた。……何かマズイことでも言ってしまったか?
「まあ、そういうことになるな。オクタリアンとインクリングの対決……百年前にあった、『カラストンビ部隊』の再結成ということになる。すでに一号と二号は活動を再開している。なるべく地上にその事実が触れないように、水面下で行動してきたのだ。しかしながら、オクタリアンはついに行動に出た。これ以上彼らを野放しにしてはならない」
 そう言って老インクリングは俺にあるものを差し出した。それは衣服だった。
 老インクリングの話は続く。
「オオデンチナマズを救うのだ。そして、そのためにはデンチナマズを取り返す必要がある。各地のボスを倒すには、デンチナマズを集める必要があるからな。……そしてこれは、そのためのスーツ、カラストンビ部隊三号の証だ。……どうだね? やってくれるか?」
 もしこれがオクタリアンと関係のないことであれば、俺はさっさと断ってしまっていただろう。
 しかし、オクタリアンがオオデンチナマズを盗んだ――その可能性があるというのなら、俺の目的と合致する。俺が求める――その未来を掴むために。
 だから俺は、それを受け取って大きく頷いた。
「なってくれるな。カラストンビ部隊三号に」
「ああ、なるよ。そしてオクタリアンと戦って、オオデンチナマズを取り返してやる」
 そして俺たちは二人並んで歩き始めた。

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posted by 巫夏希 at 03:43| Comment(0) | Splatoon:Reboot
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